連載コラム

ユニバーサルファッションの役割と可能性

ユニバーサルファッションを専門分野とされております、見寺教授の連載記事です。

第13回アジアにひろがるユニバーサルファッション

現在、アジアでも高齢化が進んでいます。

韓国が2017年に、中国が2025年に高齢社会に入りその対策が望まれています。日本が高齢社会に入ったのは1994年。阪神淡路大震災と同時期でした。最も被害を受けたのが、高齢者と障害のある方でした。その時から、年齢・性別・国籍・障害の有無に関わらず、誰もが快適に生活できる社会環境の実現を目指して、「ユニバーサルデザイン」が推進されたのです。

ファッションデザイン分野もファッション性と機能性を持ち合わせた
ユニバーサルファッションが推進されました。

一昨年、中国上海のデザイン大学が「ユニバーサルファッション」に関心を示され、情報交換の機会を得ました。日本の研究やデザイン教育・社会活動を紹介し、ドキュメンタリー映画となった「神様たちの街」を上映しました。教員も学生たちも熱心に聞き見入っていました。そして昨年、中国上海で、「国際高齢社会シンポジウム」が開催され、上海白酔池でユニバーサルファッションショーが開催されました。上海から中国全土に向かってユニバーサルファッションがひろがったのです。韓国もこれらの取り組みに関心を持ち、情報交換を行っています。特に美や健康についての関心が高く、ファッションと韓方薬、ファッションとエステなどとの連携でシニアの健康寿命を推進しています。

日本はアジアの中でも早くからユニバーサルファッションに取り組んでいます。日本のシニアが楽しく元気に人生を送っている様をモデルケースとして、アジアに発信していきたいですね!

ユニバーサルファッションの情報交換会

ユニバーサルファッションの情報交換会

ユニバーサルファッションショー

ユニバーサルファッションショー

第12回福祉の先進国デンマーク
=生き生きと生活するシニアたち=

デンマークは、国民全員が健康で文化的な生活が営めるよう制度化された社会福祉国家です

基本方針は「継続性―住み慣れた家に住み続ける」「自己決定―自身の考え方をいかに尊重できるか」「自己資源の開発―現職時代の技術や知識を社会で活用する」。

デンマークの首都コペンハーゲンには、チボリ公園というアミューズメントパークがあります。動物園や水族館、公園があり、多国籍のレストランや夜店が並び、コンサートも開かれます。日本なら動物園や水族館は子どもの遊び場。でも、ここでは、多くのおしゃれなシニアたちが楽しい時間を過ごしています。日本にシニアが安心して遊び憩える場ってあるのかな?

また、デンマークの福祉施設は解放感にあふれる生活の場です。

驚いたのは、施設なのに自宅で使用していた家具が置かれ、若い頃のようにおしゃれを楽しんでいるシニアたちを見かけることです。クリエイティブワークショップでは、能力を生かした支援が積極的に行われていました。

ファッションが好きな人はフェルトや生地でスカーフや小物を作り販売する(筆者はファッションセラピーと名付けています)、農業が好きな人は菜園作り、料理が好きな人はレシピや果実のジャムやケーキを作ります。鶏を世話する人、家や庭の修理をする元大工さんも。それぞれの役割を担ってシニアたちは毎日を多忙に楽しく暮らしています。私もこうありたい!不安だらけの世の中、シニアが生涯、元気に楽しく暮らしていれば、若者たちも元気になるでしょうね!

デンマークの福祉施設では、住み慣れた家の懐かしい家具に囲まれて暮らす

デンマークの福祉施設では、住み慣れた家の懐かしい家具に囲まれて暮らす

第11回機能的な防災ファッション
=おしゃれな山ガールを参考に=

「いざという時に役立つ便利グッズ」について考えたのは、
1995年の阪神・淡路大震災に遭ってからでした。

日常生活にも対応できて、なおかつ震災時にも対応できる衣服やグッズとは何か?そのような意識で町中を見てみると、震災時に対応できるさまざまなすぐれ物がありました。よく参考にするのが機能的なスポーツウェア関連の商品です。

近年、若者から高齢者まで山登りが大人気。

天候の変化を想定した山ガールファッション

山は天候が変化し、それに耐えうる服やグッズが必要です。保温性や速乾性、軽量感のある素材を使ったトレーナーやパンツ、足を守るかわいい柄のタイツや靴下、ポケットの付いたショートスカート、頭を守る帽子や体温調整しやすいネックウオーマー、視認性の高い花柄のレインコートなど、すぐれ物を多く発見します。おしゃれで機能的な山ガールファッションを身にまとい、自然の中を歩く姿を見ていると、これが日常と震災時に対応できるファッションだ!と思います。コンパクトで持ち運びも軽く、日常生活にも取り入れてみてはいかがでしょうか。

また、「阪神・淡路大震災人と防災未来センター」のホームページで、各家庭でいざという時に備える防災グッズチェックリストを入手できます。体を守る帽子や手袋、運動靴、マスクやタオル、風呂敷、サバイバルシート、鏡や髪の毛用のゴムや安全ピンなど、あると便利なモノとしてあげられています。いざという時に心強いグッズを日常生活の中で無理なく使っていきたいものですね。

第10回「組み合わせ」でなりたい自分を創りましょう!

シニアになれば、おなかが出てきたり、ウエストのくびれがどこかに行ったり。

「若い時はすらっとしていて良かったわ」。でも、戻らない過去に憧れを抱いても、青春時代は戻ってはこない。今の自分を磨くことに全力を注ぐ方が、これからの人生楽しいのでは。

では、衣服の「色」と「素材」と「形」の組み合わせで、なりたい自分を創りましょう!

なりたい自分を「組み合わせ」で創る!

なりたい自分を「組み合わせ」で創る!

背を高く細く見せたい時は、体が長方形に見える工夫を。トップスとボトムスを同じ色にすると、上下が縦に長く見え、背が高く見えます。また、トップスに明るい色のセーターや首元に柄のスカーフやアクセサリーを付けると目線が上に引かれ、背が高く見えます。

細く見せたい時は、色は落ち着いたブルーやグレー、茶色などを用いると引き締まって見えます。シャツやジャケットのような体形に合ったデザインを着れば、細く見える効果あり。でも意識して欲しいのは、シニアの顔周り。常に明るい色で華やかにしてくださいね!エレガントに見せたい時は、優しいパステルカラー、レースのブラウスやフレアースカートを着ることで女性の魅力を発揮します。丸顔の人は、Vネックのトップスを着ると顔が小さく見えます。面長の人は、丸首やボートネックのトップスが似合います。

しかし、最も大切なことは、服を着た時の姿勢です。服がきれいに見える姿勢は、胸を張って背筋が凛と伸びた状態です。そして着た時の笑顔。まずは自身の体を磨きましょう。そしていくつになっても女性であることを忘れないように!

第9回たんすの着物をリフォームしませんか!
=自分だけのおしゃれ普段着へ変身=

現在、私たちは洋服を着ています。

しかし、かつての日本では和服を着て生活していました。和服は日本の気候や風習に合っていましたが、戦後、活動しやすい洋服が日常着となりました。今や和服は、七五三や成人式、卒業式、結婚式といったイベント用の伝統服となっています。

普段は着なくなった和服。どこの家にも、おばあちゃんやおじいちゃんが昔着ていた
和服がたんすの中に眠っていませんか?

反射材を使ったアクセサリー:丹羽真由美デザイン

和服をリフォームしたワンピースでファッションショーに参加
(「大人の洋裁教室/2017」で制作)

思い出の和服を身に付ける楽しみ、たんすの在庫を活用するという節約効果、さらには自分だけのオリジナルデザインというメリットからなのか、リフォームへの関心が高まっています。たんすの肥やしで終わるより、今着る洋服にリフォームする方が、先祖も着物も喜ぶかも。

直線裁ちや和服柄を生かしたワンピースは、少しフォーマルな場面で。ブラウスやベストは、日常着る洋服におしゃれな和感覚をプラスします。合わせてストールを制作しておくと、いろいろなコーディネートが楽しめますね。和服の柄や色・素材で季節感も楽しめます。また、和服をリフォームする時に、ホックや綿ファスナー、大きめのボタンを使うと着脱しやすくなります。ポケットも便利ですね。

快適な衣服の着用は、自立心を高める効果があり、おしゃれへの工夫は楽しいコミュニケーションを生み、社会参加を促進する効果があります。着脱しやすい工夫は、高齢者や障害者の残存能力を生かします。なじみのあるデザイン要素を取り入れて、残りの人生、思い出と共に楽しみたいものですね。

第8回安全・安心で快適な暮らし(2)

生活には危険が多く潜んでいます。
特に夜間や雨の日のシニアの外出は危険です。

視力が衰え、歩くのに時間がかかるシニアの事故率は高くなります。
外出時、心掛けることは、他者から分かる服装を身に着けることです。
現在、事故軽減のために、私たちは兵庫県警と共同で、日常から身に付けてもらえる反射材を使ったファッショングッズを考えています。

反射材は、暗闇の中、遠方からでも光って身を守る効果があります。
例えば、時速50㎞の車が、歩いている人を見つけて止まるには、30m必要です。しかし、暗い服の人を見つけることができる距離は、約26mです。つまり交通事故に遭ってしまうのです。
明るい色の服を着ている人は約38m、反射材を身に付けている人は56m以上で見つけることができると、(一財法)全日本交通安全協会は示しています。

私たちは、反射材を使ったバックや帽子、アクセサリーなどの
ファッション雑貨をデザイン提案し、身に付けて暗闇を歩く実証実験を行いました。

反射材を使ったアクセサリー:丹羽真由美デザイン

反射材を使ったアクセサリー:丹羽真由美デザイン

結果、360度どこからでも見える立体のものと面積の広いものが効果大でした!日頃から明るい色を着ると、元気で若々しく見えます。夜に反射材を身に付けると視認性(相手から見た時に判りやすい)が高くなり、身を守ることができます。これは一挙両得ですね。

近頃は、暗闇で光る反射・蛍光素材やシールが市販されているので、帽子やバック、車いす、つえなどに貼ると安全・安心です。明日から明るい色と反射材を身に付け、安全・安心で快適な暮らしを目指してください。そして、シニアの友人たちに情報提供をお願いいたします!

第7回安全・安心で快適な暮らし(1)

年を取れば、体の動きが鈍くなったり、繊維にかぶれたり、
体温調整がしにくくなったり…。

それは避けられないことですが、大きな危険につながることがあります。生活の中でできるだけ危険を減らし、安全で快適に暮らす工夫が必要です。

体温調節に役立つ衣服

自宅の中でも危険があるある!台所でお料理をしている時に、衣服に火が移ることがあります。火災事故に対応した不燃性かっぽう着を身に付けましょう。自宅内を何気なく歩いていても滑ってしまい転倒。。。転倒予防の滑り止め付き靴下などで身を守る工夫も考えましょう。

体温調節がしにくくなるシニアには、着脱しやすいベストやカーディガンがお勧めです。フード付きトレーナーも、雨の日や風の強い日に重宝する衣服です。かさばらず、持ち運びしやすい帽子、スカーフ、扇子などをバッグに入れておくと朝夕の気温差に対応できます。また、加齢臭を指摘されたりしませんか?シニアは清潔感が大切です。菌の繁殖や臭いを防ぐ抗菌防臭作用、雨をはじき蒸れない透湿・撥水作用や、速乾、汚れ防止の作用のある素材が衣服やパジャマ、シーツ、オムツ、下着、エプロンなどで使われています。服の縫い代が当たってかぶれる人には、縫い代のない服も開発されています。軽くて着心地の良い軽量素材や伸縮性のある素材を選ぶと体に負担がかからず快適です。

安全で快適な生活の基本は、衣生活との関わりが大きいことが分かっていただけましたか?ちょっとした知識と工夫で安心して楽しく暮らしたいものですね!

第6回少しの工夫で優れ物に
=知っておくとうれしいリフォーム=

私は「簡単に作れて生活に便利なものって何かなあ?」
「使っていないものを何かに簡単に作り変えられないかなあ?」と
常にアンテナを張っています。

例えば、

  • ①家に頂き物のタオルが眠っていませんか? タオルは、真ん中に穴を開けるだけで首巻きや食事のエプロンに変身します。冬に欠かせないストールやマフラー。前にボタンを付けると、ずれなくて使いやすくなります。
  • ②衣服の着脱がしにくくなってきたら、ボタンや面ファスナー、ファスナーなど付属品の活用です。ブラウスやジャケットのボタンが留めにくい時は、ホックや面ファスナーに付け替えてみてはいかがでしょう。少ない握力でも衣服の着脱がしやすくなります。ボタンは、少し厚みのある大きめのものを使用すると留め外しがしやすくなります。
  • ③ ズボンのファスナー先の留め具がつかみにくい時は、おしゃれリングやループを付けると開け閉めしやすいでしょう。
  • ④ 近頃、忘れっぽくありませんか?バッグの中に入れたのに?でもどこに入れたか分からない?これらをコンパクトに整理整頓するには透明ケースがお勧め。ポーチやお財布もカラフルな物にすれば見やすくなりますね。衣服も透明ケースを使って品目別に分類すれば取り出しやすくなりますね。

ご紹介したことは、誰もができるちょっとした工夫です。ユニバーサルファッションとは、誰もが快適に生活できるモノや環境を考え創ることです。この様な工夫を積み重ね、快適に暮らしていきたいですね。

知っておくとうれしいリフォーム

知っておくとうれしいリフォーム

第5回男性のおしゃれ学 =かっこいい人、増えてほしい=

男性も長寿の時代。
仕事はバリバリでも、「自分はおしゃれとは無縁で…」と思っている男性は多いはず。

退職してあなたは自由の身。スポーツ? 旅行? 生涯教育で勉強? ボランティアに参加? まずは、これからの「生活場面」に合わせたおしゃれで機能的なファッションを考えましょう。

現役時代を思い出してください。紺やグレー・茶色の背広をベースにネクタイをアクセントにされていたのでは。そのネクタイのカラーや柄のイメージをシャツやジャケットに置き換えてトップスにすればいかがでしょう。

おしゃれに見えるコーディネート

おしゃれに見えるコーディネート

黄色や暖色系のオレンジから赤にかけて使えば、楽しく明るく自身を表現できます。女性みたいだと思う男性もいますが、硬い表情を和らげるのはこれくらいが一番。またチェックやストライプのポロシャツやシャツ、ロゴ入りTシャツなどは動きが出て若々しく見えます。目線が上に行くので、上半身が大きいかっこいい男性に見えますね。

春夏は、軽快さを表現するためにベースカラーを薄く。秋冬は、落ち着き感を出すために濃く。通年のアクセントは、明るいカラーを選びます。明るい色に抵抗のある男性は、からし色や赤茶、赤紫など少し落ち着いた暖色を選びましょう。カラーは、他者から見た時、自身の表現に大きな影響を与えます。

若々しく見えたり、落ち着いて見えたり、自由にコントロールできるのです。でも大切なのは自身の表現。背筋を伸ばして歩き、鏡を見て笑顔の練習をすること。まずは奥さまや仲間から、「一緒に歩いてもいいよ!」。「歩きた~い!」と言われる男性を目指してくださいね。

第4回年を重ねるほど華やかに
=「色」と「柄」でなりたい自分に=

シニアになれば、おしゃれは若者たちのものと思い込み、
無関心な人が増えるように思います。

その考え方は大きな間違い。年齢を重ねるほどおしゃれをする意識が必要です。高齢になっても「生き生き元気に見えたい」という人が多くても、実際は「私は年だから」と地味なグレーや茶色、目立たない小柄を着ているのではありませんか?余計に暗くお年寄りっぽく見えませんか?

ベルギーアントワープのおしゃれなシニアたち

ベルギーアントワープのおしゃれなシニアたち

誰もが年を重ねると体力が低下し、顔色が悪くなり、しわが出て、白髪になります。それらをカバーしたいシニアファッションには、「明るい色」と「楽しい柄」が効果的!欧州のシニアは、高齢になるほど、華やかな色や柄を身につけて、背筋を伸ばして、元気にさっそうと町中を歩いています。元気に若々しく見えるポイントは、スカートやパンツは暗い色でも、トップスには、赤、オレンジやピンク、イエローなど明るい色を身につけること。顔の周りに明るい色を持ってくると元気に見えます。しわが目立つ首元には、柄のスカーフを巻くとアクセントになります。

メガネやアクセサリーも光沢感があり、顔を華やかに見せてくれます。花柄のブラウスも若さの秘訣ですね。華やかに見せたい時は、多色カラーのブラウスやセーターを。口紅も、衣服の色に合わせて。顔がパッと明るくなります。

熟年は、深みがあって面白い。「老化」としてマイナスに捉えるのではなく、「老華」としてもっと華やかに堂々と生きる「Beautiful Aging」を目指してほしいと思います。

第3回シニアを元気に美しくさせるファッションショ―

現在、高齢化が進む中、地域の中で生涯、元気に暮らし続ける
「地域包括ケアシステム」が推進されています。

神戸市の中央南に位置する兵庫区は、高齢化率が高い区で、「やさしさと思いやりのまち兵庫」を目標として、さまざまな取り組みを実施しています。
中でもシニアたちの心身を元気にさせる「モダンシニアファッションショー」は、今年で13年目!

兵庫区に在住、在勤、またはゆかりのある概ね60歳以上の男女約30名を募集し、「おしゃれ講座」を開催。シニアがおしゃれに見えるヘアメイクとファッションをアドバイスし、きれいに見える姿勢や歩き方、笑顔の作り方などのレッスンも行います。次は「コーディネートチェック」。たんすの中に眠っているお気に入りの衣装などを持参してもらい、アクセサリーや帽子などをおしゃれにコーディネートします。本番までの2カ月間でどのように変身するのでしょうか。もちろん10歳は若返りますよ! 

ショー当日、「まあ、別人みたい!(失礼な!)」「すてき!」と、褒め合い合戦です。背筋を伸ばし、笑顔満開で舞台を堂々と歩かれます。今では区長をはじめ、老人クラブや婦人会の会長らも参加し、区あげての取り組みとなっています。

そして、続けていると良いことがあるものですね。11回目の時、この取り組みがドキュメンタリー映画「神様たちの街」(田中幸夫監督)となりました。国内外で上映され、「元気が出た!高齢社会も捨てたものじゃない!」などの嬉しい評価も多く頂きました。
兵庫区の元気なシニアたちは、今日もおしゃれして地域のために日夜活動しています。

HP: https://www.youtube.com/watch?v=Hnd4AoP4fg8

第2回おしゃれは年を取るほど効果あり

私は高齢者や障害のある人たちと仕事をする中、
不思議な事に出会います。

おしゃれ講習会を開催すると、皆さん普段と違っておしゃれに気合が入り、表情まできりっとされ、言葉遣いもしっかりされます。2回目からは見違えるようにおしゃれになり、外出するのが楽しくなったと言われます。化粧講習会を試みた施設では、きれいになりたいという願望から高齢者が目に見えてイキイキしてきたという報告もあります。

また、寝たきり老人をなくすため、1989年に厚生労働省が発表した「高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)」では「寝たきりゼロへの10カ条」として、衣生活が重要であると示されています。「暮らしの中でのリハビリは 食事と排せつ 着替えから」(第4条)、「朝起きて まず着替えて身だしなみ 寝・食分けて 生活にメリとハリ」(第5条)など、健全な衣生活の重要性と効果を示しています。

日常、当たり前に行っている衣服の着脱行為も繰り返すことにより、身体機能のリハビリになり、残存能力の活性化につながり、心身共に健康に生きることへの大きな足掛かりとなるのです。

おしゃれを意識することで、
気持ちがリフレッシュし、生活が楽しくなる。

衣服で装うと、人に見せたくて外出したくなる。

つまりおしゃれ心は、他者とのコミュニケーションや社会参加の促進にもつながると考えます。
第一線を退いた後の長い余生を、第二の人生と捉え、自ら管理し計画していかなければなりません。大いにおしゃれ心を開花させ、生涯、健康で楽しく暮らしていきたいものですね。

健康寿命と平均寿命の推移

第1回未来を創る-ユニバーサルファッション-

私はファッションデザインを
専門として30年!

色々なファッションを手掛けてきた中、高齢者・障害者ファッションはやりがいのあるライフワークです。
現在、「人生65年時代」から「人生90年時代」に対応する心構えが必要だと平成28年版高齢社会白書が示しています。

人生90年を
元気で楽しく暮らすためには、
どうすればよいのでしょう。

「ユニバーサルファッション」からそのヒントを見つけてみませんか?

ファッションとは、とかく、若者のシンボルのように思われがちです。でも、高齢社会と言われる時代に何か矛盾しているような…。年齢を重ねると、目が見えにくい、白髪になる、顔色が悪くなってきた、体形が変わり太ってきた、足腰が動きにくくなった…など体の具合も自然と変化します。

ユニバーサルファッションとは、高齢や障害で体が不自由になっても元気におしゃれを楽しむスタイルや考え方を実践することです。若い時のきれいやおしゃれは当たり前。高齢になっておしゃれをすれば、まわりの人たちは褒めてくれるし、見てる側も気持ち良い。何よりも、おしゃれに関心を持つことは、体と心のビタミン剤としての効果があり、予防医学につながると考えています。

これからは少子高齢化の時代。高齢になることをマイナスに捉えるのではなく、熟年者として社会の重要な支え手、担い手であり続けてほしい。
まずは、社会参加をするためのおしゃれな自分を創りませんか。

Profile

見寺 貞子 MITERA Sadako

神戸芸術工科大学
芸術工学研究機構長 / 教授
大学院 / 芸術工学研究機構 / ファッションデザイン学科

1978年
武庫川女子大学家政学部被服学科卒業
1980年
関西ドレスメーカーデザイン専門学校卒業
1980年
近鉄百貨店入社 商品本部 婦人服及びプライベートブランド商品開発担当
1994年
神戸芸術工科大学 工業デザイン学科 ファッションデザインコース 就任
2016年
神戸芸術工科大学 芸術工学部長 ファッションデザイン学科教授 芸術工学博士
研究分野
ユニバーサルファッション研究、がん患者の帽子研究、障がい者のモノづくりデザイン支援
社会活動
神戸UD(ユニバーサルデザイン)推進活動…夏休み子どもUD教室、神戸UDフェア
婦人大学・高齢者大学等のセミナー講師
論文
肢体不自由者の体型特性の把握と衣服設計の実践・評価 神戸芸術工科大学大学院博士論文/2006年
著書
ユニバーサルファッション―誰もが楽しめる装いのデザイン提案― 中央法規出版(株)/2002年
美しく見えるシニアの服 文化出版局/2004年